医薬品の供給停止や限定出荷を確認しても、それだけでは先に提案すべき薬局は決まりません。供給状況と地域別需要を組み合わせ、薬局の採用品・在庫・代替需要を確認する順番まで整理すると、営業リストを実際の接触先選びに生かせます。
この記事では、厚生労働省の供給状況データとNDBオープンデータを使った仮順位の付け方、薬局単位で確認する項目、営業リストへの記録方法を解説します。読後には、担当エリアの薬局をA・B・Cに分け、最初に確認する提案候補を選べます。
供給リスクと地域別需要から営業優先順位を決める考え方
供給停止品目がある薬局を、すべて同じ順番で訪問する必要はありません。先に見るべきなのは、対象品目の供給状況と担当エリアの地域別需要の両方に当てはまる地域です。ただし、地域データだけで薬局ごとの在庫や採用品までは分からないため、最後は薬局単位の確認を加えて順位を確定します。
営業優先順位は、次の3段階で作ると整理しやすくなります。
- 医薬品の供給停止・限定出荷などを品目単位で確認する
- NDBオープンデータなどで、対象薬効分類の地域別需要を比較する
- 薬局の採用品、在庫、代替需要を確認して接触順を決める
この順番なら、「供給リスクが高い」という理由だけで提案先を増やさず、地域需要があり、提案理由を明確にできる薬局から着手できます。
供給状況は「供給停止」だけで読まない
厚生労働省の「医療用医薬品供給状況報告」では、出荷対応と出荷量が別の区分で示されています。出荷対応だけでなく、出荷量や今回掲載時の更新有無も営業リストに残してください。
| 確認項目 | 主な区分・情報 | 営業リストへの反映 |
|---|---|---|
| 出荷対応 | 通常出荷、限定出荷(自社の事情・他社品の影響・その他)、供給停止 | 供給リスクの現在の状態として記録 |
| 出荷量 | Aプラス、A、B、C、D | 出荷対応とは別の列に記録 |
| 更新情報 | 今回掲載時の更新有無に「New」があるか | 前回リストからの変更確認に使う |
| 掲載時点 | 使用したファイルやシステムの基準日 | 古い判定をそのまま使わないために記録 |
| 解除・再開に関する記載 | 具体的な情報が確認できるか | 確認できない場合は「未確認」とし、見込みを推測しない |
たとえば「限定出荷」と「出荷量減少」は同じ意味ではありません。供給対応の制限があるのか、比較対象に対して出荷量が減っているのかを分けて記録します。営業上は、供給停止や出荷停止に近い状態を最優先に置きつつ、限定出荷は地域需要と薬局の採用品を確認して順位を調整します。
供給状況の確認先は、厚生労働省の医療用医薬品供給状況報告です。供給状況は毎日更新され、月ごとの推移も公表されています。営業リストを作った日だけでなく、接触前にも最新状態を確認してください。
地域需要は薬局単位の需要と分けて扱う
厚生労働省のNDBオープンデータ分析サイトには、処方薬の都道府県別・薬効分類別数量が収録されています。対象品目を薬効分類へ対応付け、担当エリアの数量を比較すれば、どの地域を先に見るかを決めるための需要指標になります。
ただし、地域需要のデータは薬局ごとの処方量や在庫を示すものではありません。営業リストでは、次のように「地域の需要指標」として記録します。
- 使用したNDBの回次、対象期間、薬効分類
- 対象都道府県と市区町村など、営業上の地域区分
- 対象薬効分類の数量と、社内で設定した需要区分
- 品目と薬効分類の対応が確認できたか
- 個別薬局の採用品・在庫が未確認であること
品目と薬効分類の対応が曖昧なままでは、地域需要と供給状況を正しく組み合わせて判断できません。対応が確認できない品目は、需要スコアを付けず「要確認」として別管理にします。地域需要が高く見えても、対象薬局がその品目を採用しているとは限らないためです。
優先アプローチ先を絞り込む5ステップ
1. 対象品目と供給状況の基準日を固定する
まず、営業提案の対象にする医薬品を決めます。品目名だけでなく、規格や剤形など、社内で識別できる単位をそろえてください。そのうえで、供給状況のファイルまたはシステムを確認し、次の項目を転記します。
- 出荷対応
- 出荷量
- 今回掲載時の更新有無
- 掲載時点
- 解除・再開に関する確認結果
前回取得したリストを更新する場合は、「状態が変わった品目」と「変わっていない品目」を分けます。Newが付いた品目は、前回の優先度をそのまま引き継がず、地域需要との組み合わせを再計算します。
2. 品目を地域需要の分類へ対応付ける
次に、供給状況で確認した品目を、NDBの薬効分類と対応付けます。完全に対応できない場合は、無理に分類を当てはめず、個別確認の対象に残してください。
この段階で作るのは、薬局の順位ではなく地域の需要区分です。たとえば、社内ルールとして「高・中・低・未確認」の4区分を置き、使用したデータの回次と対象期間を一緒に管理します。これは統計的な成約予測ではなく、どの地域の薬局から確認するかを決めるための分類です。
3. 地域条件で薬局の母集団を作る
地域需要の区分ができたら、担当エリア内の薬局を一覧化します。薬局名、所在地、市区町村、電話番号、FAX、管理薬剤師、営業時間など、接触に必要な項目をそろえます。
この時点では、供給停止品目を採用していると断定しません。「対象地域にある薬局」という母集団を作り、後から採用品と在庫の確認結果を加えます。
4. 供給リスクと地域需要を組み合わせて仮順位を付ける
次の表は、最初の接触順を決めるための判定例です。自社の商材や担当エリアに合わせて、需要区分や確認項目を調整してください。
| 供給状況 | 地域需要 | 仮順位 | 次に行うこと |
|---|---|---|---|
| 供給停止または出荷停止に近い状態 | 高 | A | 採用品、在庫、代替需要を最初に確認する薬局として抽出 |
| 限定出荷・出荷量減少 | 高 | B | 対象品目の使用状況と入荷状況を確認してから提案候補に残す |
| 供給停止または限定出荷 | 中・未確認 | B〜C | 地域区分と薬効分類の対応を見直し、薬局単位の質問を準備する |
| 供給状況は通常 | 高 | C | 供給不安を切り口にせず、通常の商材適合性を確認する |
| 供給リスクあり | 低、または品目との対応が未確認 | 保留 | 採用品が確認できるまで優先接触の対象から外す |
| 供給状況や掲載時点が古い | いずれも不問 | 保留 | 最新データを取得してから順位を付け直す |
A判定でも、導入意向や商談化を意味するわけではありません。接触の順番を決める仮順位です。B・C判定を含め、薬局単位の確認結果で更新します。
5. 確認結果を記録して順位を見直す
接触前または初回接触時に、次の質問を確認します。
- 対象品目または同一成分の製品を採用しているか
- 現在の在庫量と、次回入荷の見通しを確認できるか
- 代替品や代替需要が発生しているか
- 供給状況の変化について、薬局側で確認したい項目は何か
在庫や採用品を確認できた薬局は、仮順位を確定順位へ更新します。反対に、地域需要が高くても対象品目を扱っていない薬局は、今回の提案候補から外すか、別商材のリストへ移します。
電話の切り出しは、薬局が影響を受けていると決めつけない形にします。
「対象エリアの処方動向と医薬品の供給状況を確認し、在庫・代替対応に関するご提案でご連絡しました。現在の採用品と入荷状況を確認できますでしょうか」
この聞き方なら、供給停止を理由に必要性を断定せず、採用品と在庫という次の判断に進めます。
営業リストに残す項目を決める
供給データと地域データを営業活動に生かすには、判定結果だけでなく、判定の根拠と次の行動を残します。最低限、次の項目を用意します。
- 薬局名、所在地、市区町村、電話番号、FAX、管理薬剤師、営業時間
- 対象医薬品、出荷対応、出荷量、掲載時点、更新有無
- 対応付けた薬効分類、NDBの回次、対象期間、地域需要区分
- 採用品の確認状況、在庫の確認状況、代替需要の確認状況
- 仮順位、確定順位、確認日、次の接触方法、担当者メモ
「供給リスクが高い」「需要が大きい」といった評価だけを残すと、後からその理由を検証できません。供給状況の基準日、需要データの対象期間、薬局への確認結果を分けて記録してください。
GasoLeadで薬局リストと接触に必要な項目を整える
この作業で時間がかかりやすいのは、需給判定そのものより、担当エリアの薬局を同じ形式で一覧化し、接触に必要な項目をそろえる工程です。
GasoLeadは、全国から市区町村まで地域を指定して薬局を絞り込み、在宅対応・後発品体制・高度調剤などの状況を比較できます。営業目的に応じて、電話番号、FAX、管理薬剤師、営業時間、開設者・運営者、従業員数など、必要な項目を選んでCSVで取得できます。在庫・卸営業の提案先を選ぶための項目構成も用意されています。
使い方は次の順番です。
- 供給リスクを確認する対象地域を、都道府県または市区町村で指定する
- 営業基本と、商材に必要な薬局の比較項目を選ぶ
- 電話・FAX・管理者・営業時間などを含むCSVを取得する
- 供給状況、NDBの地域需要、採用品・在庫の確認欄を営業管理表へ加える
- A・B・Cの仮順位と次の確認事項で並べ替える
GasoLeadで用意できるのは、薬局の営業母集団と接触準備に必要な情報です。医薬品の供給状況や地域需要の判定を自動的に確定するものとして扱わず、厚生労働省やNDBで確認した結果を別列で管理すると、データの役割を混同しません。
まとめ:最初に接触する薬局を決める一手
医薬品の供給停止や限定出荷を営業優先順位へ反映するなら、供給状況、地域別需要、薬局単位の採用品・在庫を分けて確認します。最初の一手は、対象品目の最新の供給状況とNDBの対象期間を固定し、担当エリアの薬局リストにA・B・Cの仮順位を付けることです。
その後、採用品と入荷状況を確認できた薬局だけ順位を確定すれば、供給リスクを理由に候補を広げすぎず、次の営業提案に進むためのリストになります。