医薬品供給不足を薬局向け営業の提案テーマにするなら、まず在庫・発注・代替検討・情報共有のどこで作業が増えたかを特定します。課題を工程単位に分けると、薬局ごとの負担を確認しながら、提案の焦点を絞れます。
この記事では、全国的な供給状況と薬局内運用を切り分ける確認項目、直近の1件を時系列で聞くヒアリング手順、緊急度と改善余地から提案対象を1つ選ぶ方法を整理します。読後には、営業リスト上の候補を個別ヒアリングへ進め、提案書に書く業務課題を決められます。
医薬品供給不足の提案は「対応全体」ではなく1つの工程に絞る
医薬品供給不足を営業テーマにするとき、いきなり「安定供給への対策」を提案すると、薬局側の負担と提案内容がずれやすくなります。先に確認したいのは、在庫確保、発注先の調整、代替検討、処方元や患者への説明のうち、どこで作業が繰り返されているかです。
営業上のゴールは、供給不足の有無を判断することではありません。直近の1件を材料に、負担が集中した工程を1つ特定し、その工程を提案書と次回の確認事項に落とし込むことです。
薬局の業務課題を4つの工程に分けて聞く
厚生労働省の研究資料に掲載された薬剤師調査では、供給情報が不十分なことによる日常業務の問題として、「適正な発注・在庫確保が困難」が90.4%、「同一患者で商品の変更を複数回しなければならない」が81.9%、「入荷の見通しがなく、保有在庫で処方・調剤を適切に調整できない」が81.4%、「複数の卸に発注せざるを得ない」が78.4%でした。これは個別の薬局の事実ではなく、薬剤師全体の回答から見た課題の候補です。薬局への営業では、次の質問として使います。
| 確認する工程 | 聞き取る事実 | 提案対象として残す条件 |
|---|---|---|
| 在庫・発注 | 不足した品目、発注量、納品量、発注先、在庫確認の担当者 | 発注先の確認や在庫調整が同じ品目で繰り返されている |
| 代替検討 | 代替品の検討回数、処方元への確認者、患者への説明、記録方法 | 同一患者や同一品目で確認・変更・記録のやり直しが続いている |
| 供給情報の確認 | 次回納品、納品量、解消時期、状況の変化を把握する先 | 情報を探す、複数先へ問い合わせる、更新を共有する作業が続いている |
| 薬局内の共有 | 誰が情報を受け、誰が発注・調剤・説明を引き継ぐか | 担当者が変わるたびに同じ確認が発生している |
代替品や処方変更については、営業担当者が適否を判断するのではなく、薬剤師と処方元が確認する工程を聞き取ります。提案書には特定の薬剤への変更を盛り込まず、確認先、記録、情報共有のどこを扱う提案なのかを明記します。
全国の供給状況と薬局内運用を切り分ける
供給不足の負担が大きくても、その原因が薬局内の運用にあるとは限りません。厚生労働省は、医療用医薬品の供給状況を毎日更新し、限定出荷と供給停止の月次推移も示しています。まずは厚生労働省「医薬品等の供給不安への対応について」で、対象品目の供給状況を確認する起点を作ります。
そのうえで、薬局の直近事例と次の3つを照合します。
- 対象品目の出荷状況と、薬局が認識している不足の期間
- 発注量に対する納品量、次回納品の見通し、複数の卸への発注状況
- 代替検討、処方元への確認、患者説明、記録が発生した回数
供給状況と現場の記録が一致する場合は、供給情報の確認や代替調整を提案候補にします。一方、供給状況では説明しきれない発注・在庫の負担が残る場合は、発注手順、在庫の共有方法、担当者間の引き継ぎを確認します。どちらかを最初から決めず、品目と1件の対応経過を軸に切り分けます。
ヒアリングでは「最後に困った1件」を時系列で確認する
「供給不足で困っていますか」と聞くだけでは、負担の種類を特定できません。直近の1件を時系列でたどり、作業の回数と関係者を記録します。
- 品目と発生時期を確認する いつ、どの品目で、通常と違う納品や発注拒否が起きたのかを聞きます。発注量と実際の納品量、次回納品の見通しが分かっていたかも確認します。
- 最初に追加された作業を特定する 在庫の再確認、別の卸への発注、代替品の確認、処方元への連絡、患者への説明のどれが最初に増えたのかを聞きます。
- 作業の繰り返しと引き継ぎを聞く 同じ患者や品目で何度も変更・確認が起きたか、担当者が変わった際に情報を探し直したかを確認します。回数を答えられない場合は、直近の対応記録や問い合わせ履歴を見ながら整理します。
- いま残っている未解決の作業を1つ選ぶ 情報収集、発注・在庫調整、代替確認、説明・記録のうち、次回も発生しそうな作業を1つだけ提案対象として残します。
この順番なら、「大変だった」という印象を、品目、作業、確認先、繰り返しの有無を含む営業記録として残せます。相手がすでに実施している対応を確認してから聞くため、既存の運用を否定せずに改善余地を探せます。
緊急度と改善余地で提案対象を1つ選ぶ
聞き取った内容は、次のように整理します。営業担当者が提案の優先順位を付けるために使います。
| 確認結果 | 最初に残す提案テーマ | 次回に確認すること |
|---|---|---|
| 納品量や次回納品が読めず、問い合わせと情報確認が続いている | 供給情報の収集・共有 | どの情報を、誰が、どのタイミングで更新するか |
| 複数の卸への発注や在庫確認が同じ品目で続いている | 発注・在庫管理の業務整理 | 発注先、在庫数、納品予定をどの記録で管理しているか |
| 代替品の確認、処方元への連絡、患者説明が繰り返されている | 代替検討に伴う連絡・記録の整理 | 確認者、承認・連絡先、患者への説明記録の残し方 |
| 発生は一度だが、対応経過や担当者が分からない | 提案を急がず、事実確認 | 対象品目、発生回数、対応時間、現在の運用 |
緊急度は、患者への説明や調剤の調整が止まるか、複数の関係者への確認が続くか、次回納品まで同じ作業が発生するかで見ます。改善余地は、担当者が変わっても同じ情報を確認できるか、発注・在庫・連絡の記録がつながっているかで確認します。両方が高いと感じても、最初の提案では1工程に絞ります。
営業リスト作成と個別課題の確認を分ける
薬局への新規営業では、候補施設を選ぶ作業と、実際の供給対応の負担を確認する作業を分けます。GasoLeadは地域で薬局を絞り、在庫・卸営業向けの項目を選び、電話・FAX・管理者などの項目を選び、CSVにまとめられます。これにより、営業リストを作成してから、前述のヒアリング項目を使って個別の課題を確認する流れを作れます。
ただし、在庫管理や関連項目がリストにあることだけで、その薬局に医薬品供給不足の負担があるとは判断できません。地域、施設情報、営業上の確認項目で候補を整理し、電話や面談で直近の1件を聞き取ってから提案対象を確定します。
電話の切り出しは、次のように具体的な工程を示します。
「薬局の供給対応について、発注・在庫調整と代替確認のどちらに負担が偏っているかを伺い、該当する業務の整理方法をご案内したくご連絡しました」
相手の回答後は、すぐに商材の説明へ移らず、「その対応は直近で何回発生したか」「どの担当者が確認しているか」「次回納品の情報はどこで共有しているか」を聞きます。候補抽出の情報と、個別薬局で確認した業務記録を混ぜないことが、提案のずれを防ぎます。
提案書には「負担が集中した1工程」を書く
提案書では、医薬品供給不足という大きなテーマを表紙に置くだけで終わらせません。次の4点を1枚に整理します。
- 対象品目と、直近に起きた対応
- 繰り返された作業と確認先
- 薬局が現在行っている対応
- 次に確認する業務工程を1つと、提案の対象範囲
たとえば、複数の卸への発注と在庫確認が課題なら、代替薬の選定まで広げず、発注状況と在庫情報の整理を提案の中心にします。患者説明の記録が課題なら、在庫管理全般に提案範囲を広げず、誰がどの情報を引き継ぐかを確認します。
まとめ:次の営業では直近の1件から聞く
医薬品供給不足を薬局向け営業の提案テーマにする前に、在庫・発注、代替検討、供給情報、薬局内共有のどこに負担が集中したかを切り分けます。最初の一手は、候補薬局へ「最後に困った1件」の品目、発注・納品、確認先、繰り返し回数を聞き、その中から提案対象を1つに絞ることです。