病院の次年度予算に医療機器・サービスを組み込む営業では、入札公告を待つのではなく、予算要求と院内評価の締切から逆算して動く必要があります。大型案件の初回接触は、導入希望時期の6〜12か月前を目安に置くと、評価導入、見積、関係部署との合意形成に必要な工程を見通しやすくなります。
この記事では、公的病院の設備投資事例と入札公告の例をもとに、病院ごとの営業開始時期を決める手順を整理します。読後は、予算要求期限、審査会、関係部署、調達方式を確認し、次年度候補として残す病院と、次回予算へ回す病院を判断できます。
病院の次年度予算に入れるなら、営業開始は6〜12か月前
大型案件は、導入希望月ではなく予算要求の締切から逆算し、初回接触を半年前〜1年前に置くのが営業上の目安です。
ただし、すべての病院に共通する締切があるわけではありません。設置主体、院内の委員会、上位組織の承認、調達方式によって工程が変わるため、最初の接触で予算要求の期限と意思決定の順番を確認します。
「次年度予算に入っていますか」と聞く段階では、すでに申請資料の作成や院内審査が始まっていることがあります。営業開始時期は、入札公告や購入決裁の日ではなく、院内で要望を出せる時点から逆算するのが基本です。
入札公告を待つと、予算提案の段階を過ぎていることがある
公的病院1施設を対象にした設備投資の事例研究では、各診療科から次年度の要望書を夏頃に集め、8月末までに申請しています。その後、秋から委員会で審査し、10〜12月頃にヒアリングや協議を行い、病院長への答申を経て翌年度の事業計画へ組み込む流れでした。申請各課への計画計上の報告は翌年3月までに行われています。詳しくは公的病院における設備投資の意思決定に関する事例研究で確認できます。
この事例は1施設の調査であり、すべての公的病院にそのまま当てはまるわけではありません。それでも、予算要求、院内評価、決裁、上位組織への申請が連続する案件では、公告前に検討に必要な資料を準備する必要があることが分かります。
営業側が夏の申請期限直前に初めて提案すると、製品説明はできても、評価導入や費用試算を院内で検討する時間が残っていない可能性があります。初回接触では受注を急ぐより、次の4点を把握します。
- 予算要求を出す部署と締切
- 評価導入やデモが必要かどうか
- 診療科以外に関係する部署と審査会
- 購入、リース、入札などの調達方式と上位組織の承認
次年度予算に間に合わせる営業の4段階
1. 導入希望の12〜9か月前に、対象病院の工程を確認する
営業候補を選ぶ段階で、病院名と連絡先だけを並べて終わらせません。導入予定の年度と時期、設置主体、病床規模、関係しそうな診療科を整理し、予算要求の締切を確認する病院として記録します。
この段階の目的は、予算化の可能性を断定することではありません。次に確認すべき部署と質問を病院ごとに決めることです。予算要求の期限が不明な病院は、優先して確認する対象として残します。
2. 9〜6か月前に初回接触し、要望書に必要な論点を聞く
初回接触では、製品の機能を一方的に説明するより、現在の機器や業務の状態を聞きます。新規、増備、更新のどれに当たるのか、導入希望時期はいつか、現有機器の保守終了や更新理由があるかを確認します。
予算要求の締切が近い場合は、次年度に間に合うかを曖昧にせず、評価導入の期間、見積提出の期限、院内説明に必要な相手を確認します。期限内に必要な資料を準備できない場合は、次回の予算要求に向けた情報収集として営業工程を組み直します。
3. 6〜3か月前に、評価と院内合意の材料をそろえる
大型の医療機器やサービスでは、価格表だけで院内審査を進められるとは限りません。前述の事例では、投資額、現有機器の原価計算、増収試算、医師一人当たり収支、使用職員数、共用診療科数、申請理由、診療の質などを組み合わせて投資案を評価していました。
この評価項目をすべての病院へそのまま持ち込むのではなく、対象病院が求める形式に合わせます。営業側で準備するのは、次のような確認可能な資料です。
- 現有機器との違いと更新理由
- 導入費用、保守費用、必要な周辺費用
- 利用する診療科や職員、共用の可能性
- 診療時間、業務手順、医療安全への影響
- 増収や作業削減を試算する場合の前提条件
- 評価導入を行う場合の期間、対象部署、判定方法
費用対効果は、成果を保証する数字としてではなく、病院が確認できるよう、前提を明示した試算として提示します。算定状況や利用件数が分からないまま、導入効果を断定してはいけません。
4. 予算要求後は、審査・決裁・調達へ合わせて動く
要望書を提出した後は、営業の役割が提案を進めることから審査対応へ移ります。委員会から追加資料やヒアリングを求められる可能性を確認し、見積、仕様、保守体制、導入時期を同じ前提で更新します。
この事例では、1,000万円以上の投資に共済組合本部への申請が必要でした。高額案件では、病院内の決裁だけで完了するとは限らないため、上位組織への申請要否と時期を初期段階で確認します。
初回接触で確認する7項目
病院ごとの営業開始時期を決めるときは、次の項目を営業リストや商談記録に残します。
- 次年度のどの時期に導入したいか。第何四半期を想定しているか
- 予算要求の締切、提出部署、指定様式は何か
- 診療科の要望を審査する委員会や会議はあるか
- 用度、購買、経営企画、医事など、関係する部署はどこか
- 評価導入、デモ、試用、現場ヒアリングは必要か
- 現有機器の状態、更新理由、保守終了時期、共用状況はどうか
- 調達方式、契約までの工程、上位組織への申請や資格要件は何か
7項目のうち予算要求の締切と意思決定者が確認できない場合、すぐに提案対象として適しているとは判断しません。次回接触日を決め、誰に何を聞けば工程が確定するかを記録します。
設置主体で営業開始時期を決め打ちしない
公立病院や共済組合など上位組織の関与がある病院では、院内の要望、委員会の審査、病院長や管理者会議の決裁、上位組織への申請が分かれることがあります。前述の事例でも、医療機器の更新や購入は委員会と管理者会議を通る一方、新規事業や病棟投資は管理者会議で協議する扱いでした。
一方、民間病院について、今回確認できた資料から一律の予算編成時期や審査手順を示すことはできません。公的病院の8月末申請を民間病院へ当てはめず、経営会議、理事会、購買担当、診療科責任者のどこで決まるのかを個別に確認します。
確認状況に応じた営業判断は、次のように整理できます。
| 確認できた状態 | 営業上の扱い | 次の行動 |
|---|---|---|
| 予算要求の締切が未確認 | 優先して工程を確認する候補 | 担当部署へ連絡し、締切・会議・提出様式を聞く |
| 締切は分かったが資料が未整備 | 次年度候補として材料作成を急ぐ | 評価導入、見積、費用試算、関係部署を確定する |
| 委員会や経営会議で審査中 | 新規提案より追加説明を優先 | 不足資料、ヒアリング日、仕様変更の可否を確認する |
| 入札公告が出ている | 予算化営業ではなく調達対応の段階 | 参加資格、仕様書、提出期限、納入条件を確認する |
入札公告の後は、提案ではなく調達条件に合わせる
国立病院機構の令和8年度医療機器共同入札の公告例では、2026年6月30日の公告後、7月3日に入札説明会、8月3日17時に入札書の受領期限、8月6日に開札が設定されていました。公告後から入札書の期限までは約5週間です。この日程は一つの公告例であり、すべての病院や案件に共通する期間ではありません。
同公告では、性能・機能・技術などの資料、入札参加資格、医療機器販売業の届出、迅速なアフターサービス・メンテナンス体制などが求められています。落札者は価格だけでなく、必須性能を満たす物品の中から総合評価で決まる方式でした。詳細は令和8年度医療機器共同入札の入札公告で確認できます。
公告を見つけた時点でできることは、公告前の予算提案とは異なります。参加資格を満たすか、仕様書に対応できるか、必要資料を期限までにそろえられるかを確認し、応札する案件と見送る案件を分けます。
病院候補の洗い出しと予算確認を分けて管理する
病院への営業では、候補施設の抽出と、予算化の進捗確認を同じ作業として扱わないことが大切です。候補病院を洗い出した後に、各病院へ予算要求時期や審査工程を確認していきます。
GasoLeadは、地域を指定して医療機関を絞り込み、DXや在宅対応などの項目で提案先を比較し、電話・FAX・管理者など必要な項目を選んでCSVで取得できます。病院・クリニック営業リストから営業先の一覧を整え、架電先や訪問候補を同じ形式で管理できます。
ただし、予算要求の締切、委員会の日程、導入意向、現在の検討状況までをリスト項目だけで把握することはできません。CSVに次の管理項目を追加し、接触後に更新します。
- 予算要求締切と確認日
- 関係部署、委員会、決裁者
- 導入希望年度と時期
- 評価導入の要否
- 調達方式と公告・見積期限
- 次回接触日と確認する質問
これにより、連絡先を集める作業と、予算化の工程を聞き取る営業を分けて進められます。GasoLeadで候補病院の連絡先や比較に必要な項目を整理した後、営業担当者が予算工程を確認して優先順位を更新する使い方です。
まとめ:最初に聞くべきは、予算額ではなく締切と会議
病院の次年度予算を狙う大型案件では、導入希望時期の6〜12か月前を初回接触の目安にし、予算要求の締切、評価期間、院内合意、調達方式に応じて前後を調整します。
最初の一手は、候補病院ごとに「次年度の要望書はいつ、どの部署へ出すのか」「その前に誰が何を評価するのか」を聞き取り、確認した日と次回接触日を営業リストへ記録することです。